2012年6月4日6:33 PM

中公新書のロングセラー「理科系の作文技術」(木下是雄著、1981年刊行/2001年改版)。いい文章ではなく明快な文章を書く、そして、他人に読んでもらえるだけでなく誤解なく正確に伝える文章を書く。広報・PRの仕事をする人にとって、最低限に身につけなければならない技術が学べる本です。

本の序章に、ウィンストン・チャーチルが首相就任時に政府のえらいさんたちに送ったメモが紹介されています

「われわれの職務を遂行するには大量の書類を読まねばならぬ。その書類のすべてが長すぎる。時間が無駄だし、要点をみつけるのに手間がかかる。同僚諸兄とその部下の方々に、報告書をもっと短くするようにご配慮ねがいたい」

毎日大量のプレスリリースを受け取る記者・編集者のさけびにもきこえてきます。

前回は、本書で解説されている明快・簡潔な文章を書く心得から、「一文書一主題」と「重点先行主義」について紹介しました。今回は、明快・簡潔な文書を書く具体的なコツです。プレスリリースを書くときにズバリ役立つ10のポイントを独断でピックアップしましたので、以下に引用して並べてみます。

・「一文を書くたびに、その表現が一義的に読めるかどうか ―ほかの意味にとられる心配はないか― を吟味すること」

・「はっきり言えることはスパリと言い切り、ぼかした表現を避けること」

・「できるだけ普通の用語、日常用語を使い、またなるべく短い文で文章を構成すること」

・「パラグラフを立てて書き直すことによってぐっと読みやすく、要点をつかみやすくなる」

・「事実を記述する文はできるだけ名詞と形容詞で書き、主観に依存する修飾語を混入させるな」

・「事実の記述には意見を混入させないようにする」

・「長すぎる文を分割する、または前置修飾節が就職している言葉を前に出す」

・「一つの文の中には二つ以上の長い前置修飾節は書きこまない」

・「修飾節の中のことばに修飾節はつけない」

・「能動態で書くと、読みやすくなるばかりでなく、文が短くなる場合が多い」

どうでしょうか。前回の「一文書一主題」と「重点先行主義」に気をつけて、この10のポイントを実行できれば、記者・編集者に読んでもらえるプレスリリースが書けそうです (もちろん、内容がニュースの素材であることが前提ですけれど)。

修飾節については、本書の文の構造の解説で例題もまじえて詳しく書かれています。能動態のすすめは、英文のプレスリリース翻訳にも役立ちます。興味があるかたは、ぜひ本文にあたってみていただければと思います。

ところで、以前のエントリー「書いたプレスリリースを眺めてみよう」でわたしも似たようなことを書いたのですが、本書でも「字面の白さ」と表現して、かたい漢語やむずかしい漢字は必要最小限しか使わないようにすすめています。漢字ばかりで黒すぎる文は読みにくい。もちろん、ひらがなばかりで白すぎる文も読みにくい。「適当な白さ」が適当であると。

10のコツと白さチェックで、きょうからプレスリリースのレベルアップを図ろうではありませんか!

 

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