2015年4月27日3:57 PM

菓子メーカーのカルビーでは、「社内コミュニケーションで一貫したメッセージを醸成し、対外広報で発信し、それがまた社内に返ってくる」という情報の流れを常に意識して広報活動を行っているといいます。先日出席した宣伝会議主催の「アドタイデイズ」のセッションで聞きました。ともすれば外に向かって大声を出すことばかりに気を取られがちな企業の広報活動において、今一度立ち返ってみるべき基本姿勢だと思います。

たとえば、健康な会社ならば、事業の方針や目標、会社が目指す方向性などを、トップが社員に直接伝える機会を適宜作ります。会社の持つ価値やトップのメッセージを社員がいかに理解するかが、会社の体質強化や事業の推進に大きな影響を与えるからです。しかし、会社の価値やメッセージを全員にきちんと伝えるのは、そう簡単ではありません。特に前線の社員は、目の前にある個別具体的な仕事に追われていて、トップの言葉と現実とのギャップを感じ、自分の事としてハラオチしないことがあります。そもそも、社内の人は自分たちの価値に対して無自覚になりやすいという面もあります。

そこで重要になってくるのが、対外的な広報活動です。対外広報は、積極的な情報発信によって社会に企業を正しく理解してもらい、企業価値を高め、事業の継続や成長を支えることを主な目的とした活動ですが、発信した情報は決して行きっぱなしにはなりません。増幅して戻ってきます。特にメディアを通じて報道された事実や世間の評判は、それが積み重なることによって、誇りとなって社員に少しずつ定着します。

情報は社内外を循環することで、本当の価値を発揮します。

ところで、わたしの実家は香川県で、讃岐うどんが名物です。特にこの10年くらいで、県外からうどん屋巡りに来る人が急激に増えました。実家近くの店も、休みの日の駐車場は県外ナンバーだらけです。香川県の人は、もちろんうどんをよく食べます。しかし、少なくともわたしの親世代までは、昼休みに勤め先近くのうどん屋に行くとか、家の近所の店に行くとか、その程度だったと聞きます。25年ほど前に香川のタウン誌で、こんなところにうどん屋が!という怪しいうどん屋を探して食べ歩く連載が始まり、それが「恐るべきさぬきうどん」という本になって県内で評判になり、AERAなどの全国誌の記事になったりして、徐々に全国に知られていきます。

くだんのタウン誌の編集長だった田尾和俊・四国学院大学教授は、danchu(2013年4月号/プレジデント社)において、香川県民が讃岐うどんに親しんでいる理由は「慣れ」としたうえで、「県外人がたくさん来始め、全国であまりに讃岐うどん、讃岐うどんと言われ始めたため、後から「本場讃岐うどんの誇り」みたいな精神が香川県民に少しずつ醸成されてきたように思う」と書いています。

その結果、おじいちゃん、おばあちゃんのうどん屋に跡継ぎがやってきて、営業を継続できた店も少なくありません。県内のうどん屋はさらに増えて800軒を数えるようになったとも言われています。高松の商店街は訪れるたびに、以前にも増して賑わいを感じます。

情報の循環が奏功した好例だと思います。

 

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