2014年7月28日10:32 AM

今月は、講座や勉強会の講師、出張相談会などで、さまざまな企業や団体の広報部門の方々と交流する機会に恵まれた。これから広報に取り組んでいこうとするエネルギーにあふれていて、わたしも少なからず力をもらった。ありがとうございます。

首都圏以外に本社を置く企業にも、この一年以内にあらたに広報部門もしくは広報専任者を設置したというところが多くあった。その中には酒造会社やアパレル会社など、すでに全国的に名の知られた企業もあり、これまで広報部門がなかったことに驚いた。自分たちでメディアを持てる時代にはなったけれど、企業はマスメディアとのコミュニケーションを経営上の大事な機能として見直している。もっといえば、自由にメッセージを発信できる環境になったからこそ、客観報道の価値を再認識しているのだと感じた。

その一方で、個々の新任広報担当者は悩んでいる。社内に広報のノウハウがないし、多くが専任者一人の環境で広報に取り組んでいて、相談する相手もなく手探り状態だ。最初は広報に対する社内の理解は低いだろうし、記者や編集者にどうコンタクトすればよいかもわからない。なんとか話を聞いてもらえても、報道という成果にはなかなかつながらない。

わたしは駆け出しのころ、先輩もいたし、ある程度の広報ノウハウが継承されていたので、新しい仕事をはじめる環境としては恵まれていた。しかし、記者対応の方法や社内での立ち回りに苦悩したのは同じである。日記にもそれらしきことが書いてある。でも、広報は噛めば噛むほど味が出てくる仕事で、だんだんと「こんなトクな仕事はないな」と思うようになってきた。

卑近なところからいくと、白昼堂々と新聞や雑誌を読める。媒体を知らなければメディアとコミュニケーションできない。となりの人が眉をしかめるようなものでなければ、なんだって研究対象である。

だれよりも社内に詳しくなれる。広報の武器は情報だ。まずは社内のどこで何が起きているのか知らないと話にならない。広報をやっていると自然と社内に精通してくる。たとえ異動で別の仕事に移ったとしても、広報時代に得た縦横無尽の社内ネットワークは必ずや生かされる。

そして、なんといっても経営者の近くで仕事ができる。経営幹部のリアルな言葉を聞ける。経営の中枢に関われる。旧知の企業広報のベテランS氏は言った。「広報はトップを動かせる。それによってメディアを動かすこともできる。ということは、自分の仕掛けで世の中をリードできるかもしれないのだよ、田中くん。こんな楽しい仕事はないっすな」

広報の仕事はいいときもあれば悪いときもある。苦しい時間をやり過ごし、自分なりにストライドを刻んでいけば、エンドルフィンが分泌しはじめて、ランナーズハイならぬメディアリレーションズハイが体験できるかもしれません。

 

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