2013年6月30日7:39 PM

ソーシャルメディアによって企業がメッセージを発信する場は確実に広がっていますが、企業広報にとって報道対応が大きな関心事であることに今のところ変わりはないようです。わたしも実際に、広報講座の講師などで前線の企業広報の方々と接したときに、メディアリレーションに対する意識の高さを実感します。

経済広報センターが2009年に発表した「企業の広報活動に関する意識実態調査」でも、企業にとって重視する広報活動の対象はマスコミがトップです。最新のデータでも大きな変化はないでしょう。

ちょっとおもしろいのは、この調査の「マスコミとの付き合い方で配慮していること」という設問においては「普段からマスコミとの親睦を深める努力をしている」がトップであり、一方で「マスコミに対する不満のうち特に改善を望む項目について」においては「取材と食い違う報道」と「記者の勉強不足、理解不足」がトップとなっていることです。メディアとの親睦に努力しているのに、意図しない記事が出てしまう、なんとかならんかな、という広報の嘆きがあらわれているのでしょうか。

しかし、これらの嘆きは、「空飛ぶ広報室」(有川浩著、幻冬舎、2012年)に登場する航空自衛隊航空幕僚監部総務部広報室の鷺坂室長から、(世間やマスコミから)「不本意なことを言われるのは広報の努力が足りてないせいだ」(P.42) と一蹴されちゃうかもしれません。

上の調査結果の「親睦」が具体的に何を意味するのかははっきりしませんが、企業の広報が記者や編集者とつきあっていく土台としては、あくまで仕事でのコミュニケーションが第一です。

忙しい記者や編集者の方と話をする機会を作るのはそう簡単ではありませんが、少し工夫することによって時間は作れます。記事に書けそうなニュース素材を持って面会したり記者発表会を開いたりする以外にも、取材の前後の短い時間も有効に使えます。

たとえば、取材のあと、エレベーターホールで見送らないで「ちょっと下まで」と言って一緒に乗り込んでしまう。エレベーターに他に誰も乗っていなければ、そこで取材の感想を聞いたり、取材であいまいだった点などを補足したりする。関係ない人が乗っていたり途中で乗り込んできたりしたら、下までいってホールの端っこに誘導してちょっと話す。ちょっとしたことですが、短いコミュニケーションを積み重ねることで理解を深めることも可能です。

もちろん、チャンスを見つけて記者と食事をしたりお酒を飲みにいったりすると、コミュニケーションをとりやすくなる場合もあります。わたしも、昼前の取材のあとは「昼飯でも」となることがよくありましたし、お酒を飲むのが好きなのでタイミングを見計らって飲みにもいきました。

食事をすると快楽的な脳内物質であるベータエンドルフィンが分泌されて気分がよくなります。適度なお酒はさらにリラックスした気分にさせます。人間関係ですので、食事をすることで仕事がうまく回りだすことも少なからずあります。

ですが、記者とのコミュニケーションの基本はあくまで情報のギヴアンテイクです。記者が記事を書ける情報を、企業としてどう提供していくか。これをまじめにやる広報と記者のやりとりは自然と頻繁になってきます。

 

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