2013年2月4日2:39 PM

英語のプレスリリースを翻訳する作業が楽しい。企業広報のときも含めて長い間、翻訳業者に発注した下訳を自然な日本語に書き直していたのですが、最近はお客様へのサービス提供の一環として、原文から翻訳に取り組んでいます。

必要悪といったら言い過ぎかもしれないけれど、外資系企業日本法人の広報活動にとって決して逃れられない宿命といえるのが海外本社のプレスリリースです。メディア事情のちがいもあって、大きな事業戦略や提携話などグローバル企業の活動の鍵となる情報もあれば、なにがニュースなのか首をかしげてしまう内容のものも少なくありません。

だから、日本法人の広報活動の柱はあくまでも日本法人独自の情報であり、本社発表のプレスリリースは日本のメディアにとっての価値を基準に取捨選択のうえ翻訳するわけですが、統制の厳しい企業では本社が翻訳を強制するところもあります。苦労が絶えません。

というふうに、メディアリレーションの観点から考えると取り扱いがとても難しい本社発のプレスリリースですが、原文から翻訳に取り組んでみると、その作業が純粋におもしろい!と感じます。

特に関係代名詞や分詞形で構成された文章にぶつかったときは燃えます。英語の文章では、長い修飾句や修飾節を関係代名詞や分詞形を使って修飾すべき語のうしろに書きます。日本語は反対です。修飾節・句が前に配置されます。

だらだらとしっぽが長くなった英文を分解して、どう配列すれば日本語の文章として自然になるのか、いろいろ試してみる。決定的な構造のちがいを埋めるために試行錯誤する。超えなければならない壁があるから楽しいのだと思います。”そり立つ壁”に果敢にアタックするSASUKEのチャレンジャーのように。

関係代名詞や分詞で構成された文章を訳すときに、わたしが頭に入れておくのが、本多勝一著「日本語の作文教室」(朝日文庫)で示された修飾語に関する原則です。すなわち、「修飾・被修飾の距離が離れすぎないこと」、「節を先に、句をあとに」、「長い修飾語ほど先に、短いほどあとに」、「大状況・重要内容ほど先に」をあてはめて訳文を検討するようにしています。

ややこしい文章で悩んだときは、節や句で分解して、この原則に従って並べ替えてみると案外すんなりおさまりがつきます。長い文章は複数の文に分けて訳す場合もありますが、一文として訳す場合にこの原則が使えます。すぐに使える実践的な技術です。もちろん、日本語で文章を書くときにも忘れないようにしています。

 

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