2012年10月30日6:30 PM

広報の勉強の仕方はいろいろあるけれど、広報をうまくやっている会社の広報活動を研究すると大変効果があります。メディアに掲載された良記事から広報活動の経緯を想像してみたり、一斉発表で記事がたくさん出ている場合は元になっているプレスリリースをあたってみたり。いい事例は最高の教材です。

一方で、反面教師とか、人のふりみて我がふりなおせ、などと言いますが、悪い例をもって他山の石とするのも勉強になります。

前回のエントリーの中でちょこっと紹介した、福島第一原発の事故を検証した朝日新聞の「プロメテウスの罠」という連載ですが、9月23日の記事でがれき広域処理についての取材依頼をした記者と環境省広報室のやりとりが取り上げられています。

そこに書かれている記者と広報のやりとりがどこまで正確かはわかりませんが、その内容が見事なまでに取材対応のべからず集となっていたので、他山の石の題材としてもバチはあたらないかなと思うので紹介します。

記事によれば、記者が広域処理について担当部署に取材を申し込むと、何度かのやりとりの末に広報室から当時の細野豪志大臣が答えることになったと連絡があったとのことです。ただし、以下の条件付きで。

「取材時間は20分とする」
「事前に詳細な質問を提出すること。それ以外に回答しない」
「細野の発言はすべて掲載する」
「新聞掲載前に記事を確認する」

記者は受け入れられるはずもなく、再び担当職員の取材を申し込むが、広報室は対面取材を避けて、文面での質疑応答にのみ応じる。そのやりとりが回答に数週間かかることもあり、あらためて取材を求めたが担当者が忙しいといった理由で断られる。大臣に再度取材依頼しても、上記の条件を理由に断られる。

記事によると、この間約4ヶ月。ほとんど取材らしい取材ができていないように読めました。

へんな言い方ですが、よくできた悪い例です。

ちなみに、大臣は9月25日の記者会見で、この記事についてのフリージャーナリストの質問にこう答えています。内閣府のホームページに公開されている会見要旨から引用します。

「がれきの問題というのは、これは受け止め方が、それぞれいろんな受け止め方がありましたので、こちらが言っていることについては、とにかく正確に伝わるようにということは、事務方に指示はしておりました。例えば、テレビ局の取材も相当来ましたが、生で出演するか、もしくはノーカットで写してもらえる場合以外は取材に応じてきませんでした。なぜなら、例えば編集をする方が、考え方が私と違って、私が説明している部分については、これは映像を写さずに問題があると思われるところだけ報道されてしまったら、それは私は編集の域を超えていると思います。それは本意でない報道をされる可能性があるので、そういう可能性を排除するために全部きちんと流してくださいとお願いをしました。ですから、そういう要求に応じていただけなかったケースについては取材にはお答えしていません。これはがれきをしっかり処理するという意味でいろいろ御批判は承ります。御意見が違う方がいるのはよくわかります。ただこちらの説明がきちっと伝わらないのであれば、そういうメディアにお答えをしないというのは、私は判断として間違ってないと思います。ですから、紙媒体についてもそういう形であれば取材に応じると、すなわち全部こちらが言ったことについて書いていただける、逆に言うならば、書くことだけを聞いてくれということをずっと言ってきたのですね。それ以上でもそれ以下でもありません。」

まじっすか?

 

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