2012年9月1日4:53 PM

昨日、東京・上野の東京国立博物館で開催中の「青山杉雨の眼と書」に行ってきました。上野駅の公園口を出ると、強烈な暑さにもかかわらずたくさんの人でにぎわっていました。ちょうど、ベルリン国立美術館展やマウリッツハイス美術館展などの人気展覧会もやっています。

それにしても、上野に行くたびに日本人の美術鑑賞熱の高さに驚かされます。チケット売り場は長い列になっていました。たぶん、館内は作品ごとに黒山の人だかり。

それに比べると、青山杉雨展はすいていて、ゆっくりじっくり鑑賞できました。一般的には青山杉雨(あおやまさんう)という書家の名は知られていないと思います。昭和の時代から平成5年に亡くなるまで書壇をリードした日本の代表的な書家です。創作だけでなく、中国の書の研究にも尽力した書家で、今回の展覧会では自作品とともに中国書画の貴重なコレクションも観ることができます。

「一作一面貌」

青山杉雨は、一つの作品に一つの顔、つまり一つとして同じ顔の作品は作らないということを強く意識していたそうです。独自の作風を確立すると、ともすれば同じような表情の作品になりそうですし、それはそれでスタイルなのだと思いますが、青山作品は作品ごとに多彩な表情を放つ。

「一作一面貌」の精神は、書や芸術の話だけにとどまらず、いろんな仕事に通じるものなんじゃないかと思います。もちろん、わたくしたちの仕事にも。広報・PRの原則「一発表一ニュース」と似てなくもないですし。

この展覧会には、さまざまな書体の青山作品が展示されていますが、篆書という甲骨文字や金文の趣を残す古い文字で書かれたものも多いので、これまで書に興味がなかったとしても絵のように楽しめると思います。

また、「個々の結体は求心的でありながら全体として外への広がりを持った清新な書風」とか「理知的な黒に対する白の空間美」とか「雄大で力強くよどみない雄渾な筆致」とか、独特の解説文も興味深い。

「青山杉雨の眼と書」は、9月9日まで開催されています。
東京国立博物館ホームページ

 

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