2012年8月3日8:39 PM

なにか打ち込んでいるものがあると、それに関連したものが日常生活のあらゆるところで目に入ってきやすくなるものです。仕事でも趣味でも。

わたくしごとでいうと、サン・マイクロシステムズ日本法人に勤務していたときは、「サン」という2文字にいちいち反応する身体になっていた。たとえば、自宅で新聞を読んでいるときも「サンマ」や「サンウェーブ」といった見出しに目がいってしまう。街を歩いているときには、コーヒーショップの看板の「JAVA」や薬局にある「ジャバ」が自然と目に入ってくる。といった具合です。

いまでも、広報やPR、メディアなどの文字にはとても敏感だ。たとえば、本屋のビジネス本コーナーにはこれらを題材にした本が置いてあるのだから、仕事がら目に入ってあたりまえなのだけれど、新書や小説のコーナーにこのあたりの文字があるとそこだけ浮き上がってみえてくる。

そんなこんなで、おととい仕事の移動途中に立ち寄った本屋で、有川浩の「空飛ぶ広報室」という風変わりな題名の新刊小説が目に飛び込んできた。さっそく購入して読んだ。

有川浩の小説はこれまでほとんど読んだことがなかった。娘たちが熱心にドラマを見ていたので、どんなもんかと「フリーター、家を買う」を一冊読んだだけ。こどものころに住んでいた場所が出てくるので「阪急電車」も買ったけど、妻だけが読んでそのままになっている。そもそも最近まで男性だと思っていた(すみません)。

「空飛ぶ広報室」(なんか、ケストナーの飛ぶ教室と似てますね)は、元パイロットの若手自衛官が広報室に配属されて、慣れない仕事の仕事に奮闘する物語だ。物語の舞台となっている航空幕僚監部広報室は、報道班と広報班に分かれている。報道班は記者クラブを中心に日々のマスコミ対応や情報発信を担当しており、この小説の主人公が所属する広報班はテレビ番組やイベントでの露出で認知度向上を目指す企画チームという設定だ。

わたくしはBtoB企業の仕事が長いので、どちらかというと報道班の仕事のほうがなじみ深くて感情移入しやすいのだけれど、テレビへの売り込みや番組作りへの協力に右往左往して仕事をおぼえていくストーリーはとてもわかりやすかった。それにしても、自衛官がテレビ局に企画書持って売り込みにいくなんて、広報の仕事をやっていてもなかなかイメージしにくいんじゃないでしょうか、ほんとに。

物語の前半で、テレビのディレクターの無理解に腹を立てた新米広報官に対して、普段はミーハーだけど人望の厚い広報室長が言った「(世間やマスコミから)不本意なことを言われるのは広報の努力が足りてないせいだ」というセリフが印象に残っています。

 

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