2012年5月2日10:26 AM

ゴールデンウィークになると思い出すことがあります。

今はなきサン・マイクロシステムズ日本法人で働いていた10年前の2002年5月2日に、米国本社のナンバー2であったエド・ザンダーCOOが退任した。海の向こうの役員人事とはいえ、当時のサンはそれなりに注目されている企業だったし、COOも来日したときは必ず記者会見したりインタビューを受けたりして日本のメディアとも交流していたので、ゴールデンウィークの谷間にもかかわらず多くの問い合わせがあった。業績が下がりはじめた矢先の実力者COOの退任という事実は、日本のメディアにも少なからずマイナスの印象を与えた。

わたしは1996年10月から2005年1月までサンで広報を担当した。在籍期間の前半分は上昇期、うしろ半分は下降期という逆V字期間だったのだが、ピンチのときこそ広報の対応が試されると後になって痛感する。

広報部内で徹底しようとしたのは、「業績が芳しくないときこそ正確な情報を適切なタイミングできちんと出すことを強く意識する」、ということだった。会社の現状を考えると躊躇してしまいそうなテーマの取材も、ピンチをチャンスに変えられるメッセージの出し方を考えて対応するように心がけた。社内のスポークスパーソンたちも協力してくれた。グルーヴ感があった。

反対に、調子のいいときは社内も押せ押せムードなので、広報部門は意識的にちょっと冷静になってみる必要がある。広報のとる態度は、反対が正解なのダ。

もちろん、すべて広報部門の考え通りにできたわけではない。業績が回復しない時期が続くとサンの社内も情報の出し方が消極的になっていった。前にもちょっとしたエピソードとして書いたことがあるけれど、2003年のスコット・マクニーリーCEO来日のときにはテレビも含むアグレッシヴな活動を準備していたにもかかわらず、最終的には社内を説得できずトップの発言を最大限に生かすことができなかった。

広報とは企業の器をみせるものだと思う。広報部門は、ビジネスの調子が悪いときこそ情報発信の手を緩めない姿勢で仕事に取り組みたいものです。

ところで、ピンチといえば窮地とか苦しい状況ということですが、スマートフォンやタブレットPCなどで親指と人差し指を開いたり閉じたりする動きをあらわす言葉もピンチ。アップルがiPodやiPhoneで使い出したんだそうです。サンがアップルを買収しようとしていたなんて、もうだれも覚えてないと思いますが、アップルは文字通りピンチをチャンスに変えた企業です(なーんて)。

 

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