先日、B級ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」が兵庫県姫路市で開かれた。2日間で51万5,000人が来場し、会場となった姫路市の人口とほぼ同数が参加したことになるという。6回目の開催にして、この種のPRイベントとしては大成功をおさめています。
イベント全体としては、話題性のある企画がパブリシティを生んで、さらに話題になって定着するという、PRイベントの王道ともいえる成果を上げている。そして、イベントに参加する町の個々の名物料理にも、PRになくてはならない要素がきちんと盛り込まれていて、さらに効果が増している。
たとえば、今回ゴールドグランプリを獲得した岡山市真庭市の「ひるぜん焼そば」。そこには「差別化」と「ストーリー」というシンプルでわかりやすい、PRの原点とでもいうべきポイントをみることができた。
ひるぜん焼そばは、味付けは味噌、具材には鶏肉である。ソースやしょうゆと豚肉の組み合わせがほとんどの他の焼そばとの違いがはっきりしていて、どんな味なのか興味がわいてくる。
そしてルーツがある。昭和30年代に地元では、各家庭で工夫して調合したタレで焼そばやジンギスカンを作るのがはやっていて、あるとき「ますや食堂」のがんこなおばちゃんが考案したタレで作った焼そばを店で出したところ評判になり、地元のこどもたちから大人まで愛される名物料理になったという。だれもが自分のふるさとの駄菓子屋とかお好焼屋とか思い出しそうで、共感できる話があった。
一般の企業も、売り出す商品やサービスが他と何がちがうのか、それを開発するのにどんな背景・経緯があったのかを整理することは、広報活動の出発点となる。
音楽でも、その曲がつくられたときの背景やエピソードを知ることによって、圧倒的なリアリティをもって心にしみてきますよね。
B-1グランプリでは、こうしたわかりやすい「差別化」と「ストーリー」がこれまで上位を獲得した名物料理には備わっていて、イベントの企画全体とそれを構成する料理の両方ともが、PRが成功する材料を装備しているから、すごいパワーになっているんだなあ、とあらためて思うのである。
ほんとうはB-1グランプリの報道をみていて、ひるぜん焼そばが無性に食べたくなっただけなのだけれど、つい広報・PRの要素をさがしてしまったのでした。
今回、10位までに岡山県が3つも入っていたので、高松の実家に帰ったときにでも瀬戸大橋をわたって、どれか行ってみたいと思っています。