ここ数年で広報という仕事がかなり認知されてきた。専門の本もたくさん出版されるようになった。セミナーや勉強会、研究会なども各所で活発に行われている。認定資格もある。
当ブログでも、広報の仕事の基盤となる考え方や実務で使えるお役立ち情報をお伝えしている。プレスリリースの書き方とか記者発表会を開くときの注意点とかなんとか、実務上の知識や技術は、広報担当者なら身につけなければならないものである。
そこであえて自問自答してみる。「広報の仕事にもっとも必要な知識はなんだろうか?」
この質問にわたしは、「それはなんといっても会社についての知識と会社を取り巻く業界全体についての知識である」と答えないわけにはいかないのである。
広報は会社を代表して、社内外のさまざまな人とコミュニケーションして、会社のことを正しく理解してもらう活動を行う。
たとえば、その中でもメディアは重要な対話相手である。メディアには会社を語り、業界全体の分析や見通しも語れなければならない。
会社の近所の中学生が、社会科の課外学習で訪ねてきたら、会社の事業について14歳のこどもたちがわかるように丁寧に説明してあげなくてはならない。
会社の経営陣や社員からは、会社のことは広報に聞け、といわれるくらいになればしめたものだ。
いくら広報の知識やノウハウがあっても、会社のことを満足に知らなければ広報はつとまらないけれど、広報の知識がそれほどなくても、会社に関する深い知識と大人としてのコミュニケーションの基本があれば広報はつとまる、とひそかに考えている。
会社の歴史やこれから向かうべき方向を理解し、会社のことが好きだが冷静に批評する眼も持っている、広報未経験の優れた広報マン(広報担当者には限りません)をわたしは何人も知っている。
策士策に溺れるではないけれど、あまりテクニックのようなものばかりに目がいくと本質を見失うかもしれない。だから、あえてここで、広報の知識より会社の知識、といっておきたいのでした。