2011年8月23日1:40 PM

「事件記者」という古い映画をご存知ですか?

警視庁の記者クラブを舞台に、事件発生から社会部記者たちの取材活動、刑事や記者同士の駆け引き、抜いた抜かれたの報道合戦、事件解決までを描いたドラマである。記者クラブの緊張感と和気あいあいとした雰囲気がバランスした独特な感じや軽妙な会話が魅力だ。

もともとは昭和33年から41年までNHKで放送された人気ドラマで、その間に日活が10本映画化しており、当時ヒットしたようです。

さて、その「事件記者」の映画シリーズ第3作「仮面の脅迫」は、新聞社の誤報が題材になった一本だ(あらすじはgoo映画などで読めます)。痴漢事件のスクープ記事が一転誤報となってしまい、新聞社が対応に追われることになるのだが、これがなかなか興味深い。

ドラマの舞台である桜田記者クラブに詰めている6紙のうち、東京日報と中央日日が勇み足で誤報を飛ばしてしまうのだが、痴漢にされた薬剤師が自殺するかもしれないとなるや、いつもはライバル同士の記者たちが一旦休戦し、協力して対応に取り組む。

日報と日日は社をあげて対応する。日報は社会部のデスクがラジオに出て、「水口信夫君(注:痴漢にされた薬剤師)、至急ご連絡ください。今後の生活のこともお力になれると確信します」と呼びかけ、日日は社のPRカーを縦横無尽に東京の街を走らせて、社会部長が拡声器を使って同様に呼びかける。大胆です。

日報も日日も、これに先立って誤報に対する訂正記事は出すのだが、ベタ記事である。紙面の都合上、訂正記事は大きく出せなかったけど、他にできることはなんでもやるという姿勢をとるのである。まあ、それより訂正記事を大きく書いたほうが効果あるのでは、というつっこみはなしにして。

記事が掲載されれば、それが事実になってしまう。企業広報でもセンシティブな問題であります。

これはもちろんフィクションだけど、当時の実際の新聞社は人命に関わる誤報に対して、これに近いアクションをとったのだろうか。原作者であり脚本を書いた島田一男は新聞社出身だし、登場人物のモデルになった記者もいるようなので、多少の脚色はあったとしても実際とそうかけ離れてはいないのかもしれない。

「事件記者」は、他の話も当時の社会問題だったカミナリ族や売血なんかも題材にしていて、昭和30年代の日本を垣間見ることができる。昭和30年代を描いた映画は最近でもあるけれど、街の風景などリアリティが違います。

こんなことを書いておきながら、この映画は残念ながらDVD化されていない。数年前にNHK-BSで放送された全編を映画好きの元上司ワイ氏が録画したものを借りて、週末にだらだらとみていたのである。

それにしても誤報対応が衝撃的だったので、書かずにはいられませんでした。

 

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