2011年6月13日5:44 PM

広報には物事を俯瞰する力が必要である。当研究所のコラムで何度も書いた。ではどうやって俯瞰力を鍛えればよいか。

わたしは、初級編として、毎日の新聞や雑誌のクリッピングが有効であると断言してしまいたい。

ネットのニュースは速報性に優れているので、情報を早く収集するのに重要である。情報参謀としての広報は耳が早いことも求められる(もちろん、ソーシャルメディアの活用もね)。

一方で、新聞や雑誌は、限られた紙・誌面の中で複数の記事が重み付けされた上で整理されている。どんなニュースがどんな大きさでどんな位置に置かれているのか。自社の記事が出ていれば、他の記事と比べてどんな扱いなのか。自社の記事が載っていなくても、業界ではどんなニュースが大きいのか小さいのか。別の業界ではどんなことが話題になっているのか。

クリッピングサービスを利用すると、朝出社したらFAXなどで切り抜きが届いているので便利な面はある。記事の利用という意味では著作権の問題もクリアされている。契約によって、経営者や社員の業務に役立つ情報として提供できる。必要に応じて利用すればよい。

しかし、切り抜かれてしまった記事は、広報担当者にとって半分の意味しか持たないのではないかと思っている。記事の内容だけでなく、その記事を含む紙・誌面全体がつくるアトモスフィアをつかむことが肝心要である。

クリッピングはただの事務作業ではない。視野をひろげたり視点をふやしたりする大事な訓練なのである。ニュース素材の切り口をみつける力も養うことができる。だから、毎日広報担当者自らが作業することをお勧めしたい。毎日やっていればいつのまにか広報人としての基礎力がつくことになると思う。たぶん。

ところで個人的かつローカルな話ですが、中学生になるとき千葉から徳島に引っ越した。1980年のことである。徳島といえば踊る阿呆に見る阿呆の阿波踊りが有名なのですが、当時同じくらい県民を熱狂させたのが池田高校である。

攻めダルマといわれた蔦監督率いる池田高校は、1982年の夏の甲子園で打って打って打ちまくり、準々決勝では荒木大輔の早実を14-2、決勝でも堅守の広島商に12-2の大差で勝って全国優勝した。優勝旗とともに凱旋して郷土文化会館の広場でおこなった優勝報告会にはたくさんの人が集まり、そして中坊だったわたしも友だちと自転車で駆けつけた。

その蔦監督は「たかが野球、されど野球」と語ったと伝えられている。高校の部活動としての野球、その野球の奥深さ、野球というスポーツを通じての人間的成長、のようなものを先生として語ったんだと思う。

広報にとって、たかがクリッピング、されどクリッピング、だなと思うのであります。

 

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