2011年3月28日9:19 AM

もうかれこれ4年も前のことになるのだけれど、2007年3月31日付朝日新聞土曜朝刊別刷り「be」にアートディレクターの佐藤可士和氏のインタビューが掲載されていた。SMAPのCDジャケットのデザインや明治学院大学のブランド作りなどで有名な人である。

その記事の中で氏は、自らの仕事はコミュニケーション・コンサルタントであって、「相手から答えを引き出すこと」であり、「本当はあなた、こうしたいんじゃないの?ということをズバッとつかんで、鮮やかに解決したい」と言っている。

当時独立して一年が経とうとしていたわたしは、分野は違うけどそんなふうに仕事したいなと思って、記事を残しておいたのだが、先週事務所の整理をしていたら切り抜きが出てきた(大事な記事なのに整理が悪い)。

そのインタビューは、なぜ人の記憶に残る広告が作れるのか、という問いに対し、「僕が『広告は、見てもらえないもの』だと思って、作っているからでしょう。」とパラドキシカルに答えるところから始まる。

「多くの広告は、見てもらえるという前提で作られてる。だからどうしても、あれも言いたい、これも入れたいと欲が出る。でもそれ以前に、とにかく目や足を止めてもらわなきゃならないのに。それには広告に、価値を与えなきゃだめです。」

実際にどうすればよいかについては、「とことん本質に向き合うこと」であり「本質をつかんだら、余計なものは徹底的にそぎ落とす」ことだという。

まったくもって広報にも当てはまる。広告の部分をプレスリリースに置き換えて読んでみよう。

プレスリリースは「見てもらえないもの」と考える。記者のもとには一日に何十も何百も来るのだから。見てもらうためには、プレスリリースに価値を与える必要がある。では、プレスリリースに価値を与えるものは何か。

第一に言うまでもなくニュース素材の中身そのものである。ニュース素材の本質をつかみ、その本質を際立たせる情報以外は思い切って捨てる。タイトルも大事である。本質をきちんとつかめばそれも自ずと決まってくるものである。

そしてもうひとつ。それは広報と記者の信頼関係だ。一部の有名企業以外は、記者や編集者と何らかの形でコミュニケーションがとれていないと、いくら弾丸のようにプレスリリースを送ってもメールをポチっとさえしてもらえない(涙)。すべては、一対一の人間関係からである。記者との良好なリレーションを作ることが、プレスリリースに価値を与えてくれるのである。

広報に真剣に取り組もうとしている企業や団体は、短期に成果を得ようとせずに、ある程度長期的な視野でメディアとの信頼関係を築いていくべきなんじゃないかなと思うのであります。

 

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1件のコメント

  1. 目黒広報研究所 » Blog Archive » 書いたプレスリリースを眺めてみよう says:

    [...] い」 (プレスリリースは「見てもらえないもの」と考えよう) [...]