2011年3月9日9:28 AM

とある日、
所用でタクシーに乗り運転手に目的地を告げたところ、こう尋ねられました。

「どのように行きましょうか?」

運転手からのこの問い掛けに、少々違和感を覚えました。

客は「行き先」を告げ、運転のプロである運転手が「行き先」まで最短で最良の
「行き方」を考える。私はこれが当たり前の事だと思っていました。

しかし、ちょっと思い返してみると、最近「行き先」を告げた後に「行き方」を尋ね
られることが増えたような気がします。

そこである時、なぜ客に「行き方」を聞くのかと運転手に聞いてみたところ、いつも
通っている道や客が想像した道とは違うルートを使うと、「料金や時間などの結果
とは関係なく」クレームを付けられることが多くなり、その防衛手段として「行き方」
を聞く事が増えているとの事でした。

なるほど、そりゃぁ仕方ない。
でも、やっぱりなんかおかしい。

だってこんな事が常識になると、実は結構辛い結果が待っているのですよ。
客はうたた寝も許されず、後席から周囲の交通状況を睨みつつ、持てる知識を振り
絞って「行き方」の説明を強いられるようになる。運転手も客の指示する「行き方」を
一言一句聞き漏らさないように緊張する。

・・・なんか疲れますよね。

ただ、ふと考えると実はこれと同じような事がビジネスの現場(広報担当者とPR会社とか、宣伝担当と広告代理店とか、・・・ですね)で増加しつつあるように思います。

客は、(これまでの経験で)相手にプロの力量が無いと判断すると、ビジネスや活動
の「行き先=ゴール」を告げる事よりも「行き方=プロセス」をサービス提供者に説
明する。注文を受けた側は、ゴールが分からないまま細かく指示されたプロセスに
沿って仕事を進める。

すると、お互いがゴールを共有できていないので、いつも両者は「この道で正しい
のか?」と疑心暗鬼。プロセスをたった一つ間違えただけでも、どう修復して良いか
が分からなくなり、お互いに責任を投げつけ合う。

ビジネスの現場でこんな事が起きると、タクシー云々なんかと比較にならないくらい
疲弊すると思います。両者の関係はいつか破綻するでしょう。

プロはプロたる自覚、知識、技術、経験を持って、その瞬間に取り得る最良の「行き
方」を考え、客の告げる「行き先」まで最も安全で確実な方法で目的地に届ける。
客は自分の「行き先」をはっきりと分かりやすく相手に伝え、あとはプロを信じて、
安心して到着までの時間を過ごす。

私もプロの端くれとしてこんな関係の中で仕事をしていきたいと常々考えています。

 

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